応急的遠隔対応型メンタルヘルスケアシステムの研究に関する説明文書

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
理事長 研究責任者 中込 和幸

1.はじめに

この説明文書は、本臨床研究に参加協力を検討される方に対して、理解を深めていただくために用意した資料です。
本文書の内容についてご理解をいただいた上で、あなた自身の情報を提供するかどうかを決めてください。情報を提供していただくことは、あなたの自由意思で決めていただくようにお願い申し上げます。本システムで使用される質問項目に対する回答を通じて、あなたが提供していただく情報は、AI解析によるメンタルヘルス不調の重度分析アルゴリズムの妥当性、実用性についての調査、改善や、チャットボットの機能改善に活用させていただきます。情報を提供しないということになりましても、それによってあなたが不利益を受けることは一切なく、その場合でも、本システムを利用していただくことは可能です。その場合は、あなたが回答なさった内容は、上記AI解析に使用することはありませんが、メンタルヘルスの不調の重度に関するフィードバックを受けることは可能です。
この研究の成果が特許権などの知的財産権を将来的に生み出す可能性もありますが、その権利の帰属先はあなたではないことをご理解ください。
研究の内容についてわからないこと、心配なことなど、お尋ねになりたいことなどがありましたら、遠慮なくご質問ください。
なお、この研究で使用するメンタルヘルスケアシステムは開発途上であり、適宜更新いたします。

2.本研究の名称

研究課題名:「COVID-19等による社会変動下に即した応急的遠隔対応型メンタルヘルスケアの基盤システム構築と実用化促進にむけた探索的研究
本研究課題のシステム(KOKOROBO)は、メンタル不調の予防と早期手当、さらに必要な方に医療への橋渡しを行う、オンラインによるメンタルヘルスケアシステムです。「KOKOROBO ココロボ®」は国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの登録商標です。
この研究は、国立精神・神経医療研究センターの倫理委員会及び理事長の承認を受けて実施しています。

3.本研究の目的及び意義

新型コロナウイルス感染症の流行により、生活様式の変化、就労環境の変化や経済情勢の悪化のために多くの人が強いストレスに晒されています。一方で、メンタルヘルス不調を自覚しても、感染リスクを避けるために受診を控える傾向が強まっています。
本研究では、こうした方に、サイト上で基本情報と質問票に入力していただくことにより、必要に応じてWEB上または遠隔でメンタルヘルスサービスを受けられるような遠隔対応型メンタルヘルスシステムを構築し、その実用性を調査し、システムを改善することを目的としています。

4.本研究の実施方法及び参加いただく期間

1)研究の参加基準

この研究では、以下の条件を満たす方に参加をお願いしています。

  1. 中学生以上の年齢の方
  2. 東京都、横浜市、所沢市、川口市、千葉市、静岡市、名古屋市、豊田市、京都市、大阪市、米子市、新城市、福岡市、仙台市、郡山市在住(通勤先・通学先を含む)の方

一方、以下の条件のうち1つでも当てはまるものがある方は、研究に参加いただくことができません。

  1. メンタルヘルス不調のために医療機関を受診されている方
  2. 小学生以下の方

なお、未成年者の方はご本人に加えて保護者の方にも同意をいただきますが、ご本人と保護者の双方が本研究に参加することに同意が得られた場合のみご参加いただけます。

2)研究で用いる医薬品/医療機器/治療法について

相談システムのステップは、以下の通りです。

  1. 当サイトで本研究の参加同意を頂いたあとに、年齢や性別、生活環境などの基本情報を入力し、うつ、不安、睡眠に関する質問票に答えていただきますと、AI解析によりメンタル面の評価をいたします。(すでに医療機関を受診された方におきましては、医療機関における治療を優先し、医師の指示に従っていただくようお願いいたします。その場合でも、質問票にお答えいただければ、メンタル面の評価までは実施致します。)
  2. もしある程度の症状やリスクがあるようであれば、定期的な質問票によるフォローに加えて、認知行動療法の技法を活用した、「こころコンディショナー」というチャットボットをご紹介します。このチャットボットは人工知能を用いており、文章による対話と選択で気持ちや問題の整理をしていきます。
  3. 症状やリスクが懸念される状態であれば、電話やインターネットを通した遠隔での相談を提供します。場合によっては近隣や高度専門の医療機関をご紹介します。
  4. 本研究に参加同意後、1ヶ月毎にリマインドメールを送付し、フォローアップ評価を行います。2回連続して軽症未満と判断された場合、あるいは医療機関での治療を開始された場合は、フォローアップ終了とさせていただきます。
  5. 応急的遠隔対応型メンタルヘルスケア・システムの概要

※この研究のメンタルヘルスケアシステムおよび定期フォロー、チャットボット、遠隔相談(オンライン・SNS)に振り分けるAI解析に基づくメンタルヘルス不調の重度分析アルゴリズムは開発途上であり、適宜更新いたします。

3)研究期間、スケジュール

最初に年齢や性別、生活環境などの基本情報の他に、うつ、不安、睡眠、QOLに関する質問票にサイト上で答えて頂きます(約20分)。その後1週間以内に使用感、3週間後にはメンタルヘルスへの意識に関するアンケートに答えていただくようにメールを送らせていただきます(それぞれ約5分)。
その後の1ヶ月毎のフォローでは、うつ、不安、睡眠、QOLに関する質問票に加え、満足度に関する質問票にも答えて頂きます(約25分)。
本研究への参加に同意していただいた方については、上記の回答結果を解析用データベースに転送し、その転帰(1か月後の評価)を予測変数としてAI解析を行い、メンタルヘルス不調の重度分析アルゴリズムを開発します。

4)実施する検査について

本研究で用いる質問票には心的トラウマを問うような侵襲的な質問は含まれておらず、身体的または精神的な苦痛、健康上の不利益、不快な状態等の侵襲はありません。

5.研究参加により生じるかもしれない負担、リスク、利益について

1)生じるかもしれない負担、リスク

(1)有害事象

研究参加に伴って起こった全ての好ましくない又は意図しない傷病若しくはその徴候(臨床検査値の異常を含む)を「有害事象」といいます。本研究では、有害事象の生じるリスクはありません。

(2)その他の負担、不利益

質問に対する回答を自ら入力していただく形式のため、評価に要する時間的負担や疲労が生じる可能性があります。

2)予想される利益

本研究にご参加いただくことにより、自身のこころの状態について重度を含めて客観的に評価され、段階的なアプローチを非接触環境下で受けることができます。

3)研究を中止する場合

  1. 研究に参加した後で研究参加の辞退の申し出や同意の撤回があった場合
  2. メンタルヘルス不調のために医療機関を受診された場合
  3. その他の理由により、研究責任者及び研究分担者が研究の中止が適当と判断した場合

6.他の治療方法について

この研究は、メンタルヘルスに関する情報を収集する研究であり、研究に参加しなかった場合でもそれによってあなたが不利益を受けることは一切なく、その場合でも本システムを利用していただくことは可能です。

7.研究参加に伴う経済的負担について

本研究に参加することによるあなたの経済的負担はありません。本研究の参加によって、1ヶ月後のフォロー時に500円相当(Amazonポイント)の謝金をお支払いします。

8.研究参加後の同意撤回について

この研究への情報の提供は、あなたの自由意思で決めてください。いったんは提供に同意をされた場合であっても、当サイト上で情報提供の同意の撤回をしていただくことができます。その場合に可能な限り撤回のご希望に沿いたいと思います。ただし、いただいた情報をすでに機械学習を通じたデータ解析に使用してしまっている場合は対応することが困難であり、研究参加の同意を撤回されたい場合でも、ご希望に沿うことが難しい場合がありますのでご了解ください。
また、同意撤回される場合は、当サイトに入力された情報の研究目的の利用中止を希望する一方で、本システムの利用を継続するか否かは自由にご選択ください。

9.個人情報等の取扱いについて

当サイトに入力された回答結果は、(株)アクセライトに設置したデータベースにて管理します。データベースには、直ちに個人が特定できる情報(名前、電話番号、メールアドレス)を外して個人識別番号を用いてデータは保管され、名前、電話番号、メールアドレスを管理する個人情報管理システムは別に、国立精神・神経医療研究センターに設置されたePRO事務局で管理されます。この研究では、フォローアップ評価の連絡などの目的で、あなたの名前と研究用の番号を結びつける対応表を作成しますが、国立精神・神経医療研究センターに所属する個人情報管理者の下で厳重に管理します。チャットボットの文字情報については、NECソリューションイノベータ(株)が管理しますが、個人が特定できる情報は外された状態で保管されます。

10.試料・情報の保管及び廃棄の方法、二次利用について

本研究は、COVID-19等による社会変動下に即した応急的遠隔対応型メンタルヘルスケアの基盤システム構築と実用化促進のためのものであり、それ以外の目的で利用されることはありません。本研究の成果をふまえ、将来、新たなメンタルヘルスケアシステムの構築につながるような研究を計画する場合には、国内外の学術機関や企業の研究者が新たな研究計画書を作成し、自らの施設における倫理審査委員会で承認を得た上で実施するものとします。 なお、情報提供者の皆さまに対しては、新たな研究計画に関する情報を提供し再同意の意思確認を行う、もしくは、本情報を公開するとともに、拒否の機会を提供します。新たな研究計画に係る情報公開文書は、国立精神・ 神経医療研究センターのHPに掲載します。
なお、本研究が適切に行われるかを調べるために、研究代表者により指名を受けたモニタリング担当者や厚生労働省とその関連機関及び倫理委員会が、あなたの情報を閲覧する場合があります。しかし、これらの関係者には秘密を守る義務を課せられていますので、あなたの個人情報がその他の方に漏れたり悪用されたりすることは決してありません。同意文書に署名することにより、これらの関係者があなたの情報を閲覧することに同意したことになります。また、研究代表者により指名を受けたモニタリング担当者が、適宜モニタリングを実施することで、本研究の信頼性を確保します。

11.研究の資金源や研究者等の研究に関する利益相反について

「利益相反」とは、外部との経済的な利益関係などによって、研究データの改ざん、特定企業の優遇、研究を中止すべきであるのに継続することなど、研究が公正かつ適切に行われていないと第三者から懸念されかねない事態のことです。本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 障害者対策総合研究開発事業(精神障害分野)「オンラインによるメンタルヘルスサポートシステムに関する研究開発」(研究開発代表者:中込和幸、期間:令和5年6月6日から令和6年3月31日)及び科学技術振興機構(JST) 共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT) 共創分野・育成型「全世代対応型遠隔メンタルヘルスケアシステム(KOKOROBO-J)によるメンタルヘルスプラットフォームの開発・社会実装拠点」 (研究代表者:竹田和良, 期間:契約締結日~令和6年3月31日)により行われており、特定の企業からの資金の提供は受けておりません。
なお、この研究における当センター研究者の利益相反については、当センター利益相反マネジメント委員会で審査され、適切に管理されています。また、共同機関の研究者についても、利益相反の状況を確認し、問題ないことを確認しています。

12.研究実施後における医療の提供について

研究実施後は、必要に応じて、あなたの状態にあった治療を提供できるよう対応いたします。

13.研究に参加された方の研究結果の取扱いについて

提供いただいた試料・情報は、AI解析によるメンタルヘルス不調の重度分析アルゴリズムの妥当性、実用性についての調査、改善に活用させていただきます。また、お答え頂いた質問票の内容や相談員によるオンラインでの相談の内容などから、医療機関の受診が必要であると判断された場合は、医療機関の受診を勧めさせて頂くことがあります。受診が必要となった場合の費用は、通常の診療と同様に、ご自身の健康保険を用いてお支払いいただくこととなります。

14.研究参加によって生じた健康被害に対する補償について

本研究で用いる、うつ、不安、睡眠、QOLに関する質問票には心的トラウマを問うような侵襲的な質問は含まれておらず、情報提供者に身体的または精神的な苦痛、健康上の不利益、不快な状態等の侵襲はありません。

15.研究に関する情報公開について

この研究の概要は、研究を開始する前に公開データベースに登録し、研究計画書の変更及び研究の進み具合に応じて登録内容を更新していきます。研究を終了したときは、研究の結果を登録します。
この研究による結果は学会発表や論文など学術的な場のみで発表いたします。

16.研究計画書と研究の方法に関する資料を入手又は閲覧したい場合

研究に参加している他の方の個人情報等の保護及び当該研究の独創性の確保に支障がない範囲で、研究計画書及び研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。ご希望の場合には、「19.本研究に関してご相談等の問い合わせ先」にご連絡ください。

17.この研究を審査した倫理委員会について

国立精神・神経医療研究センター倫理委員会(以下、委員会)は、研究機関の長から研究の実施の適否等について、意見を求められたときは、倫理的観点及び科学的観点から、研究機関及び研究者等の利益相反に関する情報も含めて中立的かつ公正に審査を行います。この研究に係る委員会の手順書、委員名簿、審議内容等についてお問い合わせがある場合には下記URLに掲載されております。

倫理委員会

名称:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 倫理委員会
設置者:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 理事長
所在地:東京都小平市小川東町4-1-1
資料閲覧について以下のURLに掲載しています。
[URL]:https://www.ncnp.go.jp/hospital/partnership/ethics/index.html

18.本研究の実施体制、研究機関の名称及び研究責任者の氏名

研究機関の名称:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 理事長
研究責任者の氏名:中込和幸

この研究は、以下の施設と共同して実施されます。

慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室 研究責任者 菊地 俊暁
杏林大学医学部精神神経科学教室 研究責任者 渡邊 衡一郎
九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野 研究責任者 中尾 智博
横浜市立大学附属市民総合医療センター精神医療センター 研究責任者 吉見 明香

外部委託機関

(株)アクセライト(データベースの管理・運用) 代表取締役 板垣 貴志
サスメド(株)(メンタルヘルス不調の重度分析アルゴリズムの開発・解析) 代表取締役社長 上野 太郎
NECソリューションイノベータ(株)(「こころコンディショナー」の管理・運用) デジタルヘルスケア
事業推進室室長
奥東 裕之

19.本研究に関してご相談等の問い合わせ先

あなたやあなたのご家族がこの研究について知りたいことや、心配なことがある場合は、ご遠慮なくこの説明文書の末尾の問い合わせ窓口にご相談ください。なお、他の試料・情報提供者の個人情報や研究者の知的財産権の保護などの理由により、ご対応・ご回答ができない場合がありますので、予めご了承ください。
また、本研究の実施に際してご迷惑をお掛けした場合など、苦情の申し立てをなされる場合には、苦情窓口(当センター倫理委員会事務局)までご連絡ください。

本研究に関する問い合わせ窓口

〒187-8551
東京都小平市小川東町4-1-1
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院
臨床心理部  日吉史一
e-mail: kokorobo@ncnp.go.jp (@を半角に変えてお送りください)

苦情窓口

〒187-8551
東京都小平市小川東町四丁目1番1号
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター倫理委員会事務局
e-mail:ml_rinrijimu@ncnp.go.jp (@を半角に変えてお送りください)

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